はじめに
「Z世代」という言葉が定着して久しい今、次の時代を象徴するキーワードとして「α世代」がにわかに注目を集めています。本連載「α世代の価値観から未来を考える 」では、世代の基本定義から価値観、消費行動、マーケティング戦略上のポイントまで、実務で役立つ知見をお届けしていきます。
今回のテーマは「お金と時間に対する価値観」です。 αFindで独自に実施した「α世代のお金と時間に対する価値観調査」をもとに、世代の価値観や消費行動から将来の購買トレンドを読み解いていきます。
子どもであるα世代にとって、お金と時間はどちらも「限られた資源」です。自由に使えるお金は親から与えられる範囲にとどまり、自由に使える時間も学校や習い事に制約されます。だからこそ、その限られた資源を何に投じているかを見ることで、世代における優先順位がくっきりと浮かび上がってきます。
調査名称: α世代の 価値観に関する調査
調査⽅法:インターネット調査
調査対象者:計1,300サンプル(α世代 :625名 ※10-15歳 / Z世代:675名 ※16-29歳)
調査期間:2026年3月19日(木)~31日(火)
1.時間の使い方に見る、α世代の堅実な価値観
独自調査の中で、「自由時間の過ごし方」について聞いたところ、α世代の中でも、10-12歳は「習い事」(22.2%)の比率が高く、13-15歳になると「推し活」(33.8%)や「部活」(22.3%)が際立って高くなりました。生活の重心が、親や学校が決めた活動から、自分自身が選ぶ活動へと少しずつ移っていく様子がうかがえます。
「本当はもっと時間を使いたいこと」と「今使っていること」のギャップを見ると、この2つの層でははっきりと異なる悩みが浮かび上がりました。10-12歳が最もギャップを感じているのは「友達と遊ぶ」(+11.1pt)で、習い事などに時間を割かれる中、友人と過ごす時間が思うように取れていない様子です。一方で、13-15歳で最大のギャップは「勉強」(+13.8pt)で、部活などで自由時間が埋まりつつも、高校受験などを意識して「勉強しなければ」という焦りも抱えていることがうかがえます。

ここで興味深いのは、求めている「対象」は違っても、α世代におけるどちらの年代も最大のギャップが、すぐに楽しめる「趣味」や「推し活」のような娯楽ではなく、「友人関係」や「学び」といった時間をかけて価値が積みあがっていくものに向いている点です。実際、今すでに多くの時間を割いている「推し活」については、13-15歳ではむしろ「今で十分」という逆方向のギャップ(−9.2pt)が出ています。自由時間の使い方そのものは年齢で変わっても、「足りない」と感じる先は娯楽ではなく自己投資に近いものだという点は、10-15歳を通して共通しているようです。以前のコラムでもα世代の地に足のついた意思決定について触れましたが、変化の大きい時代に生きる彼らは、我々が思うよりも将来を見据えた堅実な価値観を持っているのかもしれません。
2.お金の使い方に見る、α世代の「モノ」消費志向
続いて、「自由に使えるお金」に関する設問では、まず「1ヶ月に自由に使えるお金」は、10-12歳で平均4,302円、13-15歳で平均4,870円という結果に。これは大人に近づくZ世代(16-19歳:平均10,829円 /20-24歳:平均17,946円/ 25-29歳:平均16,778円)と比べればごくわずかな金額ですが、その中での使い道の選び方には世代らしい特徴が表れています。
直近1年間の使い道としては、10-12歳は「貯金」(42.9%)や「コンビニの飲み物・食べ物」(32.9%)が他の年代より高く、お金の使い方を試している段階にある様子。13-15歳は「友達と遊ぶ」(64.0%)や「推し活」(37.4%)が顕著で、使い道が人間関係や好きな対象への投資にはっきりと向かっています。

一方で、「手元に残るモノ・アイテムにお金を使いたい」か「その時にしかできない体験・イベントにお金を使いたい」かを尋ねると、10-12歳は59.3%、13-15歳は64.1%が「モノ」を選び、どちらの年代も体験よりモノを選ぶ傾向で一致しています。これはZ世代全体(58.2%)と比べても同等以上の数値で、年齢による差はあっても、「形に残るものを選ぶ」という方向性そのものは、α世代の中で年代を問わず共有されている価値観のようです。

一般に若い世代ほど「モノ消費」から「コト消費」へ移行すると言われがちですが、今回の結果はその予測とは逆に、より新しい世代であるα世代の方が「モノ」への執着が強いという結果になりました。生まれた瞬間からSNSや動画配信に囲まれ、体験や思い出を手軽に共有できる環境で育ったはずのα世代が、あえて「形に残るもの」を選ぶという今回の結果は、若者だから・デジタルネイティブだから体験消費に流れやすいだろうという見方に対しては、ひとつの反証になりうるデータとも言えます。一口に「モノ消費」「コト消費」と言いますが、彼らがどのような体験(コト)を重視しているのかについては、改めて深掘りをしていく必要があるのかもしれません。
3.「根拠」を軸とした、α世代の消費価値観
購入の判断材料として何を頼りにするかでも、年代差は見られます。「専門家・公式・きちんと説明してくれる人の紹介」を頼りにする割合は、10-12歳で61.8%、13-15歳で66.1%。10-12歳の方がやや「自分に近い属性の人・インフルエンサーの紹介」(38.3%)に頼る割合が高く、情報源の見極め方が年齢とともに育っていく過渡期にあることがうかがえます。ただし注目したいのは、10-12歳であっても「専門家・公式」を選ぶ割合は6割を超えているという点です。Z世代全体でも同様の傾向(65.2%)が見られることを踏まえると、これは特定の年代に限った話ではなく、α世代が育った情報環境そのものに根差した特徴である可能性があります。

インフルエンサーマーケティングが当たり前の環境で育った世代であっても、購買の最終的な根拠としては属人的な発信力より検証可能な情報を重視する傾向は、やはり以前のコラムで触れた「情報探索は簡略化される一方、意思決定は地に足の着いたものになる」というα世代の特性とも一致すると言えるでしょう。
まとめ:デジタルネイティブが選ぶ「手堅い」選択
今回の調査から見えてきたのは、α世代を一言で「デジタルネイティブ」と括ることの限界です。スマートフォンやSNS、AIに囲まれて育った世代だからこそ、コト消費やインフルエンサー発の情報に流れやすいだろうという通説は、いずれもデータによって裏切られました。むしろα世代は、体験よりも形に残るモノを選び、効率的に情報を集めながらも属人的な発信よりも検証可能な根拠を重視するという、一貫して「地に足の着いた」価値観を持つ世代として浮かび上がってきます。
マーケティングの視点に立てば、α世代に向けて「インフルエンサーを活用する」「コト消費につながる体験を提供する」などといった表層的なコミュニケーションを重ねるだけでは、彼らの本当の優先順位を見誤る可能性があると言えます。形に残る価値の深掘りや、どのような体験価値が好まれるのかの探索、α世代の納得に繋がる要素の検証こそが、この世代の心を動かすために必要なステップとなるのではないでしょうか。世代や年代を過度に一般化して捉えるのではなく、向き合って深く捉える姿勢こそが、今後α世代へのアプローチを考えていくマーケターに求められるスタンスだと言えるでしょう。
東急エージェンシーα世代デザインファーム「αFind(アルファインド)」について
α世代の価値観と購買行動などを研究してきた東急エージェンシー「α世代研究チーム」を前身としたα世代デザインファーム。モバイル端末や生成AIの進歩などを背景に、さらに高度なデジタルネイティブとして誕生し、気候変動や多様性などを当たり前とする環境で育つこの世代は、従来のマーケティング手法では捉えきれない新たな価値観・消費行動を持っています。
αFindは、α世代研究チームの知見をベースに、各種調査やデータ分析、生活者インタビューなどを通じてα世代への理解を深め、企業のマーケティング戦略・施策に寄与する実践的な知見をご提供します。
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