はじめに
α世代は、デジタルネイティブであると同時に、これまでの世代とは一線を画す「サステナブルな価値観」をアイデンティティの根底に持っていると言われています。世界的にSDGsへの取り組みが加速する中で、この新世代が示す社会課題への感度の高さ、そして企業の姿勢を評価する潮流は、今後さらに強くなっていくでしょう。また、注意すべきは、彼らは単なる「未来の消費者」ではないということです。今この瞬間も、家庭内の購買決定に影響を与え、その価値観を通じて消費市場に新しいスタンダードを形作り始めています。
では、なぜ彼らの間でこれほどまでにサステナビリティに対する意識が強まっているのか。そして、最新の脳波調査から明らかになった、彼らの心に深く響く「伝え方」の正解とはどこにあるのか。本稿では、最新の調査資料に基づき、その真相を探っていきます。
1.なぜ、α世代は「サステナブル意識」が強いと言えるのか
α世代にとって、サステナビリティは単に学んできた「知識」ではなく、「日常」です。彼らの意識の基盤には、以下の3つの要素が深く根付いています。
教養としての標準装備
義務教育の初期段階からカリキュラムにSDGsの理解などをはじめとしたサステナビリティ教育が組み込まれており、社会課題を解決することは「特別なこと」ではなく、算数や漢字と同様に、自ら考え、他者と議論すべき基礎教養となっています。
自分事としての切実さ
2030年や2050年といった目標年次を、自分たちが社会の中心にいる時期だと捉えており、環境問題は自分たちが向き合っていくべき問題であると捉えています。
社会問題に関する情報にタイムリーに触れている
学校教育に加え、SNSを通じて世界の現状をリアルタイムで目にする彼らは、社会問題の深刻さを肌身で感じており、行動の必要性を自覚しやすい環境にいると考えられます。
サステナブルな価値観を持っていると言われているZ世代にも類似する要素は見受けられますが、どちらかというと青年期以降に学んできた「知識」としての側面が強い傾向にあります。加えて、上記の3つの要素が年々強まっていることから、α世代の方がさらに強いサステナブルな価値観を持っていると考えられます。
実際に、こうした価値観の変化が本当に「世代」によって異なっているのかを明らかにするべく、独自にコホート分析(※)を行いました。
その分析の結果、α世代が地球環境や社会課題に対して他世代に比べて高い関心を持っており、それは一過性の流行(時代効果)や未成年特有の純粋さ(年齢効果)ではなく、その世代そのものが持つ特性、すなわち「世代効果」であることが明らかになりました。
※コホート分析とは、同じ時期に生まれたグループ(世代)や、特定の期間にサービスを開始したグループなど、共通の特性を持つ集団(コホート)の行動や消費動向を時系列で追跡・分析することで、対象となる集団の特徴・特性が、時代効果、加齢効果、世代効果などのさまざまな要素の中で、何によってどのくらい影響されたのかを明らかにする分析手法です。
例えば、時代効果の例は、増税による消費意識の変化や、コロナによるお家時間が増えたなど。加齢効果の例は、高齢になると医療費が増える、や高齢になると福祉サービスへの関与が増えるなど。そして、世代効果の例としては、団塊世代はモノ消費で、Z世代はコト消費などがあげられます。

2.定量調査から見えるサステナブル訴求の効果
上述したようなサステナビリティに関する意識を有するα世代ですが、そうした彼らの意識は、マーケティングにおいては、どのような意味を持っていると考えられるでしょうか。今や消費の大きな部分を担うZ世代ではエシカルな消費の志向が強いと言われてきたこともあり、環境・社会・経済の持続可能性を意識した製品・サービスをブランドの誠実さとともに伝えるマーケティング手法であるサステナブル・マーケティングなどが多用されてきました。しかし昨今では、SDGs疲れなども言及されるようになり、安易なサステナブル訴求は「ウォッシュ」として、返ってネガティブに捉えられる危険もあります。
そうした時代の中に生まれながらもサステナビリティに対する意識が強いことが示されたα世代においては、マーケティング上のサステナブル訴求は実際に消費行動や購買意識などを喚起するものなのでしょうか。
サステナブル訴求が、本当にα世代に対して効果的なのかを検証するために、独自に定量調査を実施しました。
調査対象者は、α世代とその親世代。それぞれを2つのグループに分け、サステナブル訴求をしているCMを呈示するグループ①、商品機能を訴求するCMを呈示するグループ②に分けて、グループ①とグループ②で、「興味度」や「購入意向度」に差が出るのかを検証しました。CMは、飲食系、衣料系、日用品系の3商材についてのものとし、同一ブランドの別CM(サステナブル訴求・商品機能訴求)を呈示しています。

【親世代】
飲料系と衣料系は、サステナブル訴求無しCMを見たグループ②の方が、商品の興味度、購入意向度が高い。
唯一、日用品系のCMのみ、サステナブル訴求ありのCMを見たグループ①の方が、興味度・購入意向度が高かった。
【α世代】
3商材すべてで、サステナブル訴求ありのCMを見たグループ①の方が、商品の興味度・購入意向度が高いかった。
サステナブル訴求ありのCMの中でも、α世代から特に評価が高かったのは、企業の取り組みを紹介するものではなく、「みんなもリサイクルをしよう」といった行動を促すものでした。サステナビリティに対して、自分ゴトとしての意識が強いα世代にとっては、企業が世の中ゴトとして行動を呼び掛けている姿勢が刺さったと考えられます。実際に、α世代に対して、企業がサステナビリティに関する活動を発信することに対してどのような印象を持つかを聞いてみると、「大企業が発信してくれることで、意識する人が増えると思う」「取り組む人が増えてほしい」といった回答が得られ、サステナブルな取り組みをもっと世の中ゴトとして増やしていきたいというα世代の想いが窺えました。(画像➀)
一方で、親世代においても、唯一サステナブル訴求の方が評価が高かった日用品のCMは、見ている人に行動を促すものではなく、「エコなパッケージを使用している」といった企業の取り組みを紹介するものでした。これらの結果から親世代は、サステナブルな取り組みは世の中的に重要視されているということを認識したうえで、商品を購入し、自分ゴト化したいといった想いが読み取れます。(画像②)
この調査より、親世代についてはサステナビリティを世の中ゴトとして捉えており、企業の取り組みを紹介するようなサステナブル訴求によって、個人として購買行動で社会に貢献しようという気持ちが喚起されるということ、そしてサステナブルな取り組みを自分ゴトとして捉えているα世代は、それをさらに世の中ゴト化していきたいという想いが強いことから、サステナブル訴求が強く効果を発揮する世代であることが分かりました。
- 【画像➀】

- 【画像②】

3.α世代に響く、サステナブル広告の表現方法
さらに我々は、α世代の心に響くサステナブルなクリエイティブ表現を探るために、脳波調査を実施しました。脳波調査では、次の3つのSTEPで、さまざまなクリエイティブに対する脳の反応を調査をしています。
STEP1では、専門の機器を付けた状態で対象者がCMを視聴。STEP2で、視聴したCMについてアンケートを聴取します。このSTEP1・2で得られた脳波データとアンケートを分析し、STEP3で効果的な広告表現を抽出しました。
脳波調査で得られる脳波データは、3つの波形を示しています。(画像③)波形はそれぞれ、理解に関する指標となる黄色の「感情強度」、興味に関する指標となる赤の「感情距離」、注意に関する指標となる「注目度」の3つです。これら3つの波形がどのシーンで上がって、どのシーンで下がるかを分析することで、広告を視聴している最中の態度が分かり、どのようなクリエイティブが良いかヒントが得られます。(画像④)
- 【画像③】

- 【画像④】

まとめ:サステナブル訴求の意義~α世代を起点としたアプローチ~
企業のCSR活動やサステナブルな取り組みのPRは、そもそもα世代ではなく消費に直接的な影響力を持つ親やステークホルダーに向けたものだと考える方も多いかもしれません。しかし、これまでの調査などからは、α世代がサステナブルな取り組み対して強い関心や想いを持っている一方で、親世代は「今の時代に必要だから」といった少しドライな見方をしていることが窺えます。だからこそ、直接的に、ドライな意識を持っている親世代に対してコミュニケーションを図るだけではなく、「この企業すごい活動をしているよ」「この商品は環境に良いんだって」のように熱量や想いのある子どもが親へ教えたり、指摘される方が、意識の変化を生みやすいこともあります。こうした、通常教えられる立場である子どもなどが、逆に親などの教える立場の者に新しい価値観を伝える現象を「逆社会化」と言います。デジタル技術などにおいてよく言われる現象ですが、α世代がサステナビリティに対して進んだ意識を持っていることを考えると、同様に子どもを起点として親世代のサステナビリティに関する意識・理解が向上することは今後増えていくでしょう。すなわち、α世代へのサステナブル訴求は、間接的には消費の中枢を担う親世代への効果的なコミュニケーションにもなり得ると考えます。
また、前回・前々回のコラムでもふれたように、家庭内の購買行動に対するα世代の影響力は強まっていますし、幼少期から良いブランドイメージを築くことが将来的な購買行動に影響することも考えられます。α世代へのアプローチは「間接的な現在の消費」と、数年後の市場拡大を見据えた「直接的な未来の消費」の双方を生み出す可能性を秘めています。
定量データと、脳波データが証明した通り、α世代は企業によるサステナブル訴求を好意的に受け取り、責任感を持って社会課題に取り組もうとしています。彼らの高い意識に誠実に応えるようなコミュニケーションによって、今と未来の消費を捉えていくことの重要性は、今後も高まっていくでしょう。
東急エージェンシーα世代デザインファーム「αFind(アルファインド)」について
α世代の価値観と購買行動などを研究してきた東急エージェンシー「α世代研究チーム」を前身としたα世代デザインファーム。モバイル端末や生成AIの進歩などを背景に、さらに高度なデジタルネイティブとして誕生し、気候変動や多様性などを当たり前とする環境で育つこの世代は、従来のマーケティング手法では捉えきれない新たな価値観・消費行動を持っています。
αFindは、α世代研究チームの知見をベースに、各種調査やデータ分析、生活者インタビューなどを通じてα世代への理解を深め、企業のマーケティング戦略・施策に寄与する実践的な知見をご提供します。
- *商標登録出願中



