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体験価値で設計する選ばれるブランドづくり

インタビュー

Phygital Syndicate
小池 康裕(執行役員 CXソリューション本部 副本部長)
星野 一道(事業共創本部 東急OOHメディア事業局 事業戦略部長)
山本 江美奈(CXソリューション本部 統合ソリューション局 第5統合プランニング部)
当社は、2024年7月に、フィジカルとデジタルが融合された生活空間でのプランニング最適化を目的に「Phygital Syndicate」を設立しました。
「体験価値で設計する選ばれるブランドづくり」について、Phygital Syndicateの3名に話を聞きました。

Phygitalコミュニケーションの取り組みについて

小池:顧客接点が多様化し複雑化している現在の情報環境において、ブランドそのもの、あるいはブランドに関するコンテンツのあり方・見せ方を戦略的かつ的確にコントロールしながら、いかに効果的に統合的なコミュニケーションを図っていくかということが、クライアント、ブランドの課題として最も大きなものになっていると感じます。
星野:リアルにしてもヴァーチャルにしても何らかの強い体験がソーシャルメディアという回路を伝って情報として爆発的に増幅していく中では、「体験」を通じたコンテキストというものが重要になってきています。「何からブランドを想起してもらうのか」「ブランドから何を連想してもらうのか」というブランドの文脈づくりと顧客接点設計を巧妙かつ効果的に紐づけてコミュニケーション活動を行っていく必要があると思っています。
小池:昨年5月に発足した組織横断型チーム「Phygital Syndicate」は、デジタルメディア、マスメディア、OOH、データドリブンマーケティング、ストラテジー、カスタマーエクスペリエンスを専門領域にもつ人が集まったPhygitalコミュニケーションをデザインするチームです。企業やブランドにとって効果的な体験価値をつくるために、「統合的なコミュニケーションデザイン」、「店頭や街などのフィジカルな接点も含んだ顧客接点全体の最適化」「データの可視化」に取り組んでいます。
PESO(Paid、Earned、Shared、Owned)メディア全体(顧客接点)をどう活用していくか、生活者とブランドとの関係性、生活者とPhygitalな顧客接点との関係性に合致する最適な体験価値を提供できるように、コンテンツをコントロールする統合コミュニケーションプランニングが必要で、私たちはそれを「Phygital Communication Planning」と呼んでいます。

Phygital Communication Planning

山本:統合コミュニケーションプランニングのために、業種で異なる「体験価値」と「顧客接点」を把握できる調査パッケージを開発しました。この調査を行うことで、業種ごとに生活者がどんな「体験」を求めているのか、実際に購入や利用した生活者はブランドごとにどんな「体験」を感じているかを知ることができます。それぞれの「体験」は、「感覚・感情・思考・行動・関係」の5つの領域に分類し、ブランドイメージや機能ではない、その商品やサービスを購入・利用することで生活者がどんな「楽しいこと」「うれしいこと」を体験できるのかを明らかにできます。もし、生活者が求めている「体験」を、そのブランドの購入者・利用者が実感できていないとすれば、改善していく必要があります。例えば、不動産仲介サービスで「担当者との親密なやり取り」という体験が重要だと分かったとして、単純にそれをコミュニケーションに落とせばいいわけではなく、社員の行動指針やモチベーションづくりの部分まで踏み込んで提案を行う必要があるはずです。総合生活産業を生業とする東急グループの一員として「生活者のプロフェッショナル」である我々だからこそ、クライアントが気づいていない生活者の「体験」という視点から語ることが大事だと思っています。
星野:調査ではマスメディアだけでなく、SNSなどの口コミや店頭などそのカテゴリーごとに設定した顧客接点についても、生活者がどの接点から日頃情報を得ているのか、検索したり調べたりするときはどの接点を使っているのか、最終的に購入するときにはどの接点を参考にしているかを知ることができます。そうなると単に広告コミュニケーションに関することだけではなく、企業のサービス・ブランドが提供する接点も含め、統合的なコミュニケーションの設計が必要です。

「体験価値」の重要性

小池:調査では、体験価値のポイントが高いブランドは、市場価値も高い。体験価値のポイントが低ければブランドの市場価値も低い。一見乱暴な論理に聞こえるかもしれませんが、調査からその傾向が見てとれます。体験価値のポイントが高いブランドに対しては、今より多少高い値段を払ってでも購入したい、利用したいというユーザーの割合が高いのです。つまりは体験価値が高いブランドはそれだけ高く売れる可能性が高いということです。また、ブランド体験の総量が多ければ多いほど、購入意向や購入経験のスコアも比例して高くなる傾向にありました。

掲出イメージ(Q’S EYE)

山本:私が参画しているBTEC*という社内プロジェクトで、「5つの体験価値」から逆算してOOHのクリエイティブを制作した事例があります。そのプロジェクトでの施策もPhygital体験創出の一貫で、ビジョンに流れる映像と連動した演出がARで飛び出してくる“空間体験型プロモーション”として『TOQ IMMERSIVE OOH AR』というプロトタイプを開発しました。実証実験として人気アイドルグループとコラボし「飛び出すミュージックビデオ」を制作したのですが、「この施策において、強めるべき体験価値は5つのうちどれだろう?」という部分からチームで議論しました。ARという臨場感のある技術を用いていることから「感覚的体験」、アイドルを起用してファンの「好き」という気持ちをSNS拡散のエネルギーにしたいということから「感情的体験」。この2つの体験価値を特に強めるべきだとの見解に至り、ミュージックビデオ自体のクリエイティブや体験までの導線設計にエッセンスを盛り込みました。結果、効果測定では狙い通りの体験価値がしっかり高まっていることが確認できました。「5つの体験価値」として生活者の「楽しいこと」「うれしいこと」を因数分解することで、目指したいゴールに対して確度高くコミュニケーションを設計できるようになるということを実感しました。

*Business、Technology、Experience、Creativityの4つを軸に半歩未来のアイデアをβ版というカタチにして世の中に発信していく東急エージェンシーのプロジェクトです。

星野:OOHという媒体自体に「感覚的体験」を高められる素地があると考えていますが、今回のARを活用した設計により、つながる、共有する、社会性を持つといった「関係的体験」も強化された施策だったと思います。

「体験価値」はコミュニケーションプラングにおいて、どんな指標になるのか 

小池:「体験価値」は、一つの指標ではなく「感覚的体験」「関係的体験」など大きくは5つの種類に分類されますが、対象とする商品・サービスのカテゴリーごとに個別に、より細かく設定・計測される指標です。Phygitalコミュニケーションプランニングでは、その「価値」をデータで明らかにしていくので、必要な体験価値がなんなのか、そこに根差したコミュニケーションコンテンツはなんなのか、を考えていきます。
山本:「Phygital Syndicate」チームで行うコミュニケーションプランは、マーケティング・コミュニケーションの中心となる顧客接点を想定し、調査で明らかになった顧客接点同士のつながりを考えながら、導線を設計していくことになります。“どんな顧客接点と体験コンテンツを使って生活者にシェアしてもらうのか”。その導線に何人を巻き込むことができれば求める「拡散」を生み出すことができるか。目標に合わせて導線と巻き込む人数を計算することができます。
小池:顧客接点の場としてのOOHは、体験性を強く発揮できるメディアです。訪れる街や移動中の電車空間、人々と空間を共有してその時と場所が持つ意味性が接点となるOOHは、求められる「体験価値」を増幅させる装置として有効に機能すると考えています。
星野:昨年末実施した外食チェーン業態クライアントのケーススタディで、交通OOH/TVerやスマホ広告のOTT/テレビ広告を同時期に出稿し来店効果を測定したところ、OOHの来店効果も示された上で、OOHとTVerの両方に接触した顧客で最も高い来店効果があり、リフト値として15%以上の向上が見られました。OOH単体として広告接触することで、おいしそう、とかお店にいってみたいといった楽しい体験期待を高めて、お店へ足を運んでいただけるという効果があると思います。当社では「T-Track」というデータに基づいてimpベースでOOH出稿が可能なプログラマティック配信サービスを展開しています。ARの事例や、立体音響とOOHを組み合わせたTOQ IMMERSIVE OOH_SOUNDといったシェアの起点となり拡散につなげる活用方法とともに、テレビやデジタル広告と組み合わせて、求めるターゲットやデータに基づいたOOHの最適な広告配信も位置情報データやタグを活用した統合的な効果検証も可能です。OOHの拡張・進化によって、「Phygital(Physical+Digital)な顧客接点」全体でのメディア設計において、求められる「体験価値」に応じたさまざまな活用方法が今後広がってくると考えています。
小池:本来ブランドコミュニケーションは、単なる広告コミュニケーションだけでなく、企業・ブランドの事業活動におけるあらゆる顧客接点とその中で影響力をもつ体験価値とは何なのかを的確にとらえ、コミュニケーションのあり方から設計していくべきだと考えています。「Phygital Syndicate」は、その設計に最適解を出せるプランニングをおこなっていきます。企業にとっての重要な体験価値を探り、どんな接点でどんなコンテンツを体験してもらうか、それを創ることこそが、当社がビジョンとして掲げている「体験価値共創企業」なのだと思います。

※Phygital Syndicateは商標登録出願中です。